いちからなし

新米梨農家のあれこれ

苗を植える③

幸水の苗を

①人力で②真っ直ぐに

植える算段は出来ました。

 

次。

何メートル間隔で植えるか。

 

ジョイント栽培をする為、1.5メートル間隔で植える予定でした。

 

そもそもジョイント栽培とは、神奈川県発祥の、接ぎ木の技術を利用して木と木を繋ぐ農法で、木早期成園化や省力化が期待できる為、早くある程度の収入を確保したい新規就農の私たちにも勧められる方法なのです。

 

もともと1.5メートル間隔で植える予定で苗を育ててきた訳なのですが、

苗の育ちがなかなか良好だったので、もっと間隔を広げても良いのでは?というアドバイスを先輩梨農家さんから頂きました。

間隔が広ければ、

  • 植える本数が減るから労力が減る
  • 接ぎ木を行う本数も減るからコスト削減になる(ジョイント栽培は特許を取得されている為、1本接ぐにあたり150円前後の料金を支払わなければならない)

 

大きく育った苗は、長いもので5m程はありそうだったで、2.5m間隔で植えてみるか、と、なりました。

 

長いものを選んで苗を掘り起こし、植えてみたは良いけれど。

 

ジョイントしたい高さ、160cmに合わせてみると、意外と隣の木に届かない。

 

   どうしたものか

 

 

解決策としては

①ジョイントの高さを低めにする(枝を高めに出す前提で)。

②苗をさらに伸ばして夏になってから接ぎ木をする

 (本来は3月末から4月上旬にかけての時期が接ぐのに良い季節とされている)

③苗と苗の間にさらに苗を追加して植える

 (つまり、1.25m間隔になる)

④接がない ←ありと言えばありだけど・・・

 

 

後々、よくよくしっかり調べて分かったことは、

160cmの高さで接ごうと思うと、

 2m間隔で4mの高さ

 1.5m間隔で3.3mの高さ の苗木が必要。

つまり、2.5mの間隔で植えると、4mまで育てても160cmの高さでは接げない

 

その後、まだ植えてなかった所のうち半分程は2m間隔で穴を掘り直しました。

夫が。

 

植えてしまっていた列は、選りすぐりの長い苗を植え、それでも届かなそうな箇所は1.25m間隔で苗を追加しました。

 

添え竹もして、最終的にはこんな感じになりました。
f:id:ichi-nashi:20240229155817j:image


f:id:ichi-nashi:20240229155841j:image

さてさて、これで上手く接げるのか。

春先のお楽しみ。

梨の苗を植える②

400本ほどの幸水の苗。

 

人力で苗を掘り起こして植える、と、方向性としては決まりました。

 

さらなる課題は、どうやって、まっすぐに植えるか、です。

 

ちょっとくらい曲がっててもいい気もしますが、ジョイント栽培をする予定なので、梨の木をくっつけることを考えると、あまり曲がって植えては後々面倒な気もします。

 

地面にまっすぐ植える方法、まず考えつくのは

紐をはる

 →穴を掘る時に邪魔になりそう

   却下

 

では。

線をひく。

 →土に、いったい何で線をひく?

 

よくグラウンドとかに線を引くのに使われる、タイヤがついた石灰入れる道具は?

 →土はボコボコ、平らじゃないし、ラインも曲がりそう。タイヤに土が付いて回らなくなりそう

   却下

 

 

スプレーマーカー

 →手軽だし、特に土に害も無さそうだし、家に白いスプレーならある。

 

採用!

 

と、いう訳で、やってみました。

 

結論

 色が薄い

  見えるからまぁいいか。

 

 

では。

掘ります。

夫が。
f:id:ichi-nashi:20240228160511j:image

 

 

梨の苗を植える

ジョイント栽培をする予定で、昨年の冬に育成し始めた幸水の苗。

 

最初は大きな箱の中。


一時的に借りた場所で植えつけました。



 

 

1年がたち、大苗になった苗は、400本程あります。

これを掘り起こして、少し離れた園地に運び植え付けます。

 

植えるのは何年も何も植えられていなかった園地、人力で穴を掘って植えるのはなかなかもって一苦労な予感。

 

暗渠工事が1度は入ったとは言え、機械で掘り起こすのが良さそうです。

 

ショベルカーは持っていないので、重機レンタルの会社から借りるか、地域の先輩方の誰かに貸していただくのが良いかな。と、思っていました。

 

しかし、ショベルカーの資格が無いと誰からも借りる事が出来ない!?という事実に直面しました。

 

     まさか!!

 

昔働いていた職場で、「公道じゃないから良いんだよ」と言われ、無資格無免許でフォークリフトやトラクターを運転をしていた私は、びっくり。

 

調べてみると、無資格で現場で操縦することは「労働安全衛生法」で禁止されていて、もし操縦した場合、「無資格運転」として罰せられ、責任者が逮捕されることもあるそうです。ちなみに、公道で無免許運転をすれば「道路交通法違反」になります。

 

 

 

新規就農する時は、今後何が必要になってくるか、想像がつきにくいかと思いますが、今回の私たちの様に、いつ何処で必要になるか分かりません。就農をする時には、ショベルカーの操縦資格くらいはとっておいた方が良いかもしれません。

 

さて。

ショベルカーの操縦資格って、すぐに取れないものなのかな?と思い調べてみました。

 

ショベルカーを制作するメーカーの教習所や資格取得の養成学校で講習を受ける事で資格は取得できる様です。

 

資格の種類は、機体の重量によって分かれます。

車体総重量が5トン未満、最大積載量3トン未満の小さいもので良ければ普通運転免許で運転でき、資格は「小型車両系建設機械の運転の業務に係る特別教育」というものになります。

 

     ふむふむ

 

 

 

おおよそかかる時間は2日程(学科7時間、実技6時間程度)、金額は2万円程です。

比較的、簡単そうです。

 

開講する日程は、だいたい、ひと月に1回な所が多い。

回数が少ないから、早いうちから予約は満席。

 

     なるほど。

 

思い付いて即取得というのは無理があるという結論になりました。

 

かくして、先輩梨農家さんにとりあえずトラクターを入れて貰って、その後は人力で掘る方向です。

 

 

その後、人力でやっていたら、先輩農家さん達から「どこそこの業者なら貸してくれるよ」と情報を貰ったり、「貸してやるから言ってこい」と言って貰えたりしました。

 

経営開始型資金には落とし穴があった!?

新規就農にあたってまず必要なもの、お金。

調達方法のひとつとして、農林水産省が新規就農する人を対象に出している就農準備資金と、経営開始型資金があります。

 

交付してもらうにはいくつかの要件を満たす必要があり、経営開始型資金を希望していた私たちが何とかしなければならなかった主な要件は

 

  • 就農時の年齢が、原則49歳以下の認定新規就農者であること

この、認定新規就農者、というのになるのがなかなか大変でした!

(書類作りがあり、面接があり…詳細はまた後日にでも。)

 

  •  独立、自営就農であること

生産物の出荷はもとより、施設や機械、農地の所有や利用権の設定が必要!

要は、これまたやっかいな土地問題です。

 

 

また、この資金には夫婦型というのがあり、1.5人分の交付を受けられます。私たちも、希望しました。

 

夫婦で就農したことを示す為には、「家族経営協定」を作ります。

家族経営協定とは、家族で農業をするにあたって家事育児の役割り分担について取り決めをしたり、休日の取得について言及したりするもので、夫婦で行う場合、両者の合意が必要です。

 

何とか書類を全て提出し、審査を受け、通過し、これで資金が許可され、今後給付を受けられるはずでした!

 

が。

 

経営開始した後には、半年に1度の現状報告というものが必要になってきます。提出書類としては

  • 市から渡された書類に記入したもの(質問事項としては、新規就農者向けの研修の参加の有無や今後の方針など)
  • 通帳のコピー
  • 作業日誌
  • 半年分の帳簿  です。

 

これを提出した後には現地視察が入ります。

 

なかなか厳しい💦

 

が、さらに厳しいチェックがありました。

 

夫婦型資金の交付継続要項には

「農業生産に携わる時間が、年間を通して150日以上、1200時間以上あること」

という条件がありました。

 

この時間数を週間で考えると、

年間52週あるうち、2週間程を各実家への帰省を含めた休日とすると、残り50週。

1200時間を50で割って24。

1週間で24時間。

なーんだ、楽勝♪と思いますか?

 

この時間数を、保育園に通う子供中心の生活に、あてはめてみて下さい。

出席停止になる病気に、子供が年何回かなればアウトでは?

親に移れば、尚更です。

 

土日や夕方遅くまで働く事で労働時間を確保しようとすると、割をくうのは子供です。

 

この時間数が、給付を受けられる「最低ライン」なのです。

 

 

小さい子供に我慢させてギリギリ最低ラインを超えたとして、貰えるのはプラス0.5人分です。

夫婦型にするメリットに疑問を抱いてしまいます。

 

研修は受けたけどまだまだ経験が足らず四苦八苦中の夫と、完全初心者の妻。

何かと母親を求めるちびっこ。

 

この環境を考慮して作ったはずの「家族経営協定」は、経営開始型資金の給付要件の前では効果を示さない様で、1人1人の労働時間数が審査にかけられます。相方が最低労働時間の倍近く働いていても、もう片方が時間数達成できていなければ、夫婦型としての交付は受けられません。

 

 

1.5人分貰えるなら、もちろん夫婦型!と思っていた私は、少々安直すぎた様です。

 

夫婦型にするか、経営主一人分だけにするか。

自分たちの生活環境をよくよく考え、判断するのが良いのでしょうね。

 

 

移住先ってどう決める?

「移住して農業」

何となく憧れたこと、ありませんか?

 

私たち家族は2年半ほど前に移住して、1年ちょっと前に梨農家として就農しました。

 

そこに至るまでどう決めたか、お話したいと思います。

 

まず、移住する場所。

温暖な場所か寒い場所か

海か山か、両方か

知り合い、縁、思い入れ。何かあるか?

 

また、農業をするというのが前提であった為、

作物は何にするのか?

就農支援があるのか?

 

以上の様な条件から候補をあげていきました。

 

それから、旅行がてら下見に行きました。

その場所で移住相談のプロと話したりして気づいたのは、いわゆる一般的な農業を始めたい人は「作りたい作物の産地に行く」という決め方をするということ。そして、そうやって産地に入って行くのであれば、その作物に対する情熱が必要である、らしい。

 

残念?ながら、私たちに特にこれ!といった心に決めた作物は無く、何が商売として儲かるか、労働時間と単価の話をする事が多かったのです。

 

農業とは言え、趣味ではなく商売です。

それなのに、「これからの世の中では何が売れるのか。何を作るべきか」ではなく

「何を作りたいか」

「何に一生懸命になれるか」

といった話しになるのが少々不満でした。

 

やや納得がいかないながらも、果樹にすると決め、あとは新規就農するにあたって問題になりうる、資金・技術・土地の支援があるかどうかで場所を探しました。

特に、果樹は植えてから収益が出るまでの期間が長いので、支援制度は重要なポイントでした。(あと、私たちの性格上、地域全体での防除などが多く自分で考えて好きな様に作ることができなそうな所は除外しました。)

 

結果、梨に落ち着いたのですが、特に儲かる作物という訳でもありません。

今いる地域では、梨の木を引っこ抜いて桃にしたりぶどうにしたりする生産者が多くいます。まぁ、だからこそ梨の産地を守ろうという動きがあり、支援制度もできた訳なのですが。

 

この場所で、いちから梨を作っていけるのか。それとも、上手くいかず何にも“なし”になってしまうのか。

今はまだ、始まったばかりです。

 

ちなみに、移住してから思ったこと。

温暖化の影響を考慮に入れて住みやすさ追求で作物を選んでも良かったかも。

あと、やっぱり果樹は敷居が高い!既成園を借りるのが必須なのに、既成園を貸そうという人がなかなか居ない!

 

 

何処に移住するか。

好きな漫画に書いてあったのですが、

「大切なものがそこにあるかどうか」

 

とても同感します。

その1点に尽きるといっても過言ではないくらいだと思います。